2人で1人前、合わせて122歳のネパール珍道中

2人で1人前、合わせて122歳のネパール珍道中

2009.9.16(水)~9.25(金)  

 同級の澤井と、1969年以来6度目のネパールへ行った。今まではヒマラヤトレッキングだったが、今回は初の観光旅行。二人とも糖尿病で、且つ心臓にステントを入れている。1日4回インスリン(1回に澤井は10ポイントで小生は4ポイント)を打ち、心臓薬や健康薬(澤井はニンニク卵黄と黒酢エキスで小生は補中益気湯)を飲みながらの珍道中だった。
 9月16日の午後、高松から関空へバスで出発。長い待ち時間を過ごして、ようやく0時30分にタイ航空でバンコクへ。17日の朝4時半ごろ(時差2時間)着き、人も疎らなガランとした空港で時間をつぶす。年寄りには辛い。10時35分バンコク発、12時45分(時差1時間15分)にやっとカトマンズ到着。25ドルでビザを取得して入国。レートは円高なので、1ドルが74ルピー、10円が8ルピーだった。ジャンガムが車で迎えに来てくれていた。暑い。空気が汚いカトマンズから逃げ出し、デュリケルへ向かう。途中、今年の7月に高松へ来たニルマル(ジャンガムの友人)が経営するモーテルへ寄って休憩。本人は印度へ行って留守だったが、ジャンガムが作ってくれたニンニクチキンと冷えたビールが美味かった。くたくたに疲れていた体が生き返った。
 ジャンガムの家でシャワー(太陽熱で温めた湯が出た、ネパールでは貴重)をご馳走になった。ネパールに着いたらすぐ寝たいと思っていたが、元気回復。デュリケルの旧市街へ出かけた。ダサイン祭が始まる前なので、人々がうきうきしているようだ。人だかりがしていたので覗いて見ると、ゲームで賭け事をしていた。写真を撮ろうと構えたら、レンズの前に手を出されて邪魔された。酔っ払った肉売り人が道端で寝ている。子供達は楽しそうに遊んでいる。ビー玉や自転車の輪ころがし、カゴメカゴメに似た遊びもしていたのには驚いた。昔の日本そのままだ。路地にはアヒルや鶏、犬、牛が自由にうごめいている。数日したら祭りの生贄にされる運命のヤギが紐に繋がれ、無心で、美味そうに草を食っている。人は素朴で信仰心があつい、祭りが楽しみで、どきどきワクワクしているようだ。2001年に初めてネパールへ行った香西先輩が、感激したかのように、「ここは中世や」と言っていたのを想い出した。この夜はジャンガム宅で熟睡。
 18日の朝5時前、ドンドン・ジャンジャンと鳴る銅鑼の音で起こされた。すぐ近くにヒンズー寺院があり、朝早くからお参りに来ているとのことだ。これが毎日つづく。昔、二日酔いのジャンガムは、この音に怒り、寺院から銅鑼を捕ってきたことがあるそうだ。6時過ぎには家を出て、西の方、ポカラ、チトワンへと2泊3日のドライブ旅行へ出発。カトマンズで、ジャンガムの息子の友人というサラソティ(26歳の女性)が同乗。悪路を猛スピードで飛ばす。のろい車はすぐ追い越す。少しでも油断していると、すぐ追い越されてしまう。いつ事故があっても不思議でない。故障したバスやトラックが時々止まっている。バスの乗客は、慌てることなく、諦め顔で、車の周りでのんびり修理できるのを待っている。すると、いつしかそれを聞きつけ、バナナや軽食を売りに近くの村人が集まってくる。たくましきネパール人だ。
助手席で足を踏ん張り、気が抜けないまま、何とか無事にポカラに到着。ジャンガムが探した Hotel Lake Side に宿をとるが、偶然にもこのロッジは日本人経営だった。東野さんという若い支配人と仲良くなり、夕食後、ロキシーを飲みながら夜遅くまで語り合った。この町はマオイストが支配しているそうだ。
 19日朝早く、澤井と近くを散歩した。神の木ピーパルの大樹が、湖のほとりに並び聳え立っている。その樹の根元にはヒンズーの飾りつけがあり、人々がお参りをしている。子供達が店の掃除をしている。ネパールの子は良く働く。朝食の後、古いヒンズー寺院を見学。ネパールでは土曜日が休日なので、しかもダサインの始まりと重なり大勢の人で賑わっていた。神の山マチャプチャレの頂が雲の合間に見えた。2001年のアンナプルナBCトレッキングが懐かしい。
 ポカラを出発してチトワンへ向かう。途中、地元の観光地である大きな湖で休憩した。小さな楽器を抱えた老人が寄ってきて強請る。根負けして、大好きなレッサムピリリをリクエストしたが、これが実に良かった。お茶を飲みながら、美しい湖のほとりで、恋(失恋)の歌を聴くとは、何ともいわく言いがたし。
 再び悪路を猛スピードで延々と。チトワンに近づくと、急に道路が広く舗装状態も良くなった。深い森林の中を、ゆったりと幅広の道路が延びている。快適だ。海抜200mぐらいの大平原。所どころに象の小屋が見える。いよいよ明日は今回のメインイベント、生まれて初めて象に乗るゾー。
 20日、朝6時半から象に乗る。高さ5メートルぐらいの階段を登って、象の背中に設えている木枠の中へ乗り込む。4人まで乗れる。澤井とサラソティが前に、小生は一人後ろへ乗る。ジャンガムは何故かパスした。外国人は1人80ドルもする。普通の道を30分ほど行くと、虎に注意の看板がある。本当に出るのか、不安と期待でドキドキ。乗り心地はすこぶる悪い。腰と尻が痛い。特に後ろは駄目。象がしっぽを振るたびに足に当たる。痛いので足を引っ込めると、象使いが、「危ないから足は出しておけ」と怒る。公園入り口で手続きして、いよいよ密林の中へ分け入っていく。河馬が2頭、沼の中にいた。バンビーはたくさん現れた。この調子で行くと、もしかしたら虎が出るかもと期待するが、夢はそこまで。現実は厳しい。後は何も出なかった。約2時間乗って、くたくたになった。午後から象との水遊びがあると言われたが、キャンセルした。
 またまた悪路を猛スピードで、延々と、カトマンズへと走る。悪路で揺られると足腰が痛くなるが、後部座席の澤井は楽しい思いもしたらしい。若い女性と肩が触れ合い、手も握ってくれたようだ。厳しいドライブを終え、カトマンズ市街で観光。夕方、ジャンガム夫人と待ち合わせて一緒にバーベキューを食べた。
 21日、今度は東へ、1泊2日のドライブ旅行。目指すは、昔ジャンガムが2年間勤務していたことがあるチャリコット。そこからは、晴れてさえいればヒマラヤ山脈が美しく見えるらしい。
ヒマラヤから流れてくる大河の側道を通り、途中からスイスの援助で作った道路で山に入る。何ヶ所か関所(マオイスト?)があり、通行税を取られる。驚いた、まさに中世だ。ろう石が採れる大きな山塊を越えた所にチャリコットの街があった。街の広場には、ダサイン祭のためにけばけばしく飾り付けられた祈祷所があり、そこからスピーカーでお経を流している。美しく着飾った人々が大勢、しゃべったり買い物をしている。ジャンガムの知人が居る診療所に寄った。数十人の女性が集まり何か研修していた。聞くと、村々のボランティア看護婦達に新しい情報や知識を教えているとのことだった。非常に良い制度だと思った。そこに居た医師によると、一番多い病気は皮膚病で、次が風邪とのこと。この街一番のヒンズー寺院へも行った。靴を脱ぎベルトを外してお参りする。この日は、早めの夕食が終わると何もすることが無く、出かけるところも無く、長い夜だった。
 翌22日朝、あいにくの天気で、期待していたヒマラヤ山塊は全く見えない。チベットとの国境へ向かう。途中、ネパールで一箇所しかないバンジージャンプ所を見学して、有名な温泉へ行った。かつて2006年にランタンへ行った時、ネパールの温泉にはがっかりさせられた体験がある。そこに比べ、ここはかなり大きな温泉場だったが、やはり日本の温泉イメージとは異なる。道路から川へ下り、まず水着に着替えなければならない。チャリコットで買った澤井とお揃いの海水パンツを穿いて、いざ温泉へ。男女別の、小さいプールの様な浴槽とシャワー室がある。とてもぬるい。でも確かに、匂いと色は温泉だ。そうそうに引きあげた。
国境付近は、大きなトラックが列を成して、大混雑。銃を持った兵士たちがいる。川に架かった橋の中央が境目。人間が勝手に作った国境に、人間が縛られている。ヒマラヤ氷河からの水は、昔も今も、そして未来も、中国からネパールそして印度へと、自由に、滔々と流れているのに。国境の上に立つと、このまま越えてチベットへ行きたくなった。勿論、写真撮影は禁止。その後、また悪路を猛スピードで、デュリケルへ帰る。夜、2003年のテリッツォ・トレッキングの時シェルパとして世話になったアシスタマンと会えた。日本語が昨年より更に上手になっていた。
 23日。午前中は2つの寺院を見学し、バクタブルで土産のネパール茶を買い、ニルマルのロッジで休憩。午後から、これまた天気さえ良ければ素晴らしいヒマラヤのパノラマ風景が見えるという高原、ナガルコットへ向かう。2000メートル以上あるようで、かなり肌寒い。風情あるホテル(Hotel Space Mountain)で、夕食まで、ゆっくり談笑。ネパール語もたくさん勉強した。お客が少なく暇をもてあました19歳のボーイと仲良くなり、写真を撮ったり住所を交換した。そういえば、まだ写真を送っていないな。
 ネパール最終日の24日。朝早く外を見たが、がっかり。曇っていて、またまたヒマラヤを見ること叶わず。誰か雨男がいるのかも。朝食後すぐに空港へ向かう。空港近くのレストランへ、サラソティが澤井を見送りに来た。すっかり仲良くなった2人は、住所や電話番号を交換し別れを惜しんでいた。13時50分カトマンズ発。バンコク経由で関空に着いたのは翌25日の朝6時過ぎ。そして高松には昼前に無事到着。これにて、同級かつ同病2人合わせて122歳のネパール珍道中の終了なり。めでたし、めでたし。